れしをそう。

嘘。そう全部、嘘。Twitter:@nisemonoko

また来る季節に、誓いのキスを。

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 私はいつの時だって

「もっと触れたらよかった」と、後悔とキスをしていた。

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 人々は桜のピンク色がすごく美しかった事など、すっかりと忘れてしまっていた。

地面に枯れ落ちた桜の花びらをゴールデンウイークの予定をたてながら踏みつけて、とても楽しそうに笑ってた。

 

踏まれ、汚れてしまった桜の花びらに人々は決して目を向ける事など無かった。

戻らない季節を振り返る事など無かった。

人々は前だけを見て歩いていた。流石だった、とても立派だった。

 

 あれほど「綺麗だねー」と言いながら眺めていた色を、「汚いねー」と、誰かと話したりなどはしない。

 

春はまたやって来ると信じ込んでいて、桜はまた咲くと思い込んでいる。

人々は季節がまた巡ってくる事を、信じすぎている。

 

「お花を眺めながら食事する会」を、あれ程していた癖に、花が散ってしまった瞬間にその花の色を忘れてしまう。

もうあの花になど、興味も無くなってしまう。

人々は、どうしてこんなにも無情なんだ。と、私は思った。

 

そもそも最初から興味なんて無かったのじゃないか、そもそも美しいものだけにしか興味が無いのじゃないか、

そもそも花がいつか枯れてしまうことを知らないのじゃないのか、生きたモノだけが美しい。と、桜は咲いているから桜なんだ。と、

桜の花が咲いていない桜の木を、人々は知らないのだろう。と、私は思った。

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 と、そんな事を考えながら私は街を歩いていた。

 

そして、人々に踏みつけられた桜の花びらをこの世界で私だけはしっかりと見つめてあげた。

「私だけは君たちが美しく咲いていた事を思い出して泣いてあげるからね」と必死に、彼らに何かを伝えようとしていた。何かを与えてもらおうとしていた。

 

「私は君たちが美しいピンク色だった時の事を覚えているし、忘れない。今だって君たちはとても綺麗だし、たとえそれが踏み潰されてしまってグチャグチャな君たちであっても、私は好きだよ」と、すかさずカメラを向けてみたけれど、

なんだか彼らのこんな姿をカメラロールに収めておくのは少し違う気がした。よくわからないけれど、彼らに失礼な気がした。そしてソッとカメラをしまった。

 

その時、私は

絶対にこの記事を書こうと決めたのだった。

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 “失ってから気付くモノ”という言葉を何度も聞いた事があるが、人々はそれを知りながらも、色んなモノを手放してしていく。

それは、“次、また何かを得られる”と信じているからで、また舞い込んでくる何かを信じているからだと思う。

失って気付くモノばかりを、ただ後悔と共に抱いていても、決して前に進め無いことを人々は知っているからだ。

 

そう

人々は皆、強い。

 

散った桜の花びらに目を向けない人々はとても、強い。

当たり前を真っ直ぐに信じれる人々は、とても強い。

 

それに比べて私は、とても弱かった。

 「もっと触れていればよかった」と、「もっと綺麗な姿を見てあげたかった」と、

「美しすぎた、あのピンク色」を思い出し、また後悔とキスをしていた。

もう1度、あの春をしたい。と願っていた。

また私は、季節が巡る事を信じず、恐れていた。

 

春が来れば、夏が来る。

なんて、そんな事など無い。

何故なら、明日世界が滅びるかもしれないし、明日突然変異が起きて四季など無くなってしまうのかもしれない。

もしかすると、もう二度と桜を見る事なんてできないのかもしれない。

 

当たり前のように、確かなのは

もう二度と、あの春は来ないという事で、もう二度と27歳の私が桜を眺める事など無いという事だ。

もう二度と、2017年の桜がどんな色だったのかを

確かめる事などできないという事だ。

 

それがとても悲しくて寂しくて、涙を流してしまう私は、まだ前に進もうとはしていなかった。

ひたすら過去にキスをして、無意味な後悔を抱き締めてる。とても馬鹿みたいだ。

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 私のカメラロールには沢山の写真が残されていて、

時々、過去に遡っては「戻りたい」と涙を流す夜がある。

 

私は誰よりも過去が好きで、明日よりも昨日が好きだ。

それは、昨日もらった愛を見ている方がよっぽど楽で、どんなモノよりも、確かなモノだから。

 

愛されていた。みんながいた。生きてた。

それらが確実にここにある。と確信できるのは、過去だけが持っている真実だからだ。決して私を裏切らない。

 

それに比べて、明日は怖いものばかりで

明日、愛されなくなるかもしれない

明日、みんなが私から消えてしまうのかもしれない

明日、ひとりぼっちになってしまうのかもしれない

明日、私は死んでしまうのかもしれない

明日なんて、もう来ないのかもしれない

 

だっていくら信じたとしても、明日は、私を裏切るかもしれない。

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 桜は散らないでいい、水着を着てずっと楽しそうに、はしゃいでいればいい、葉っぱもずっとオレンジでいいし、毎日サンタさんは来たらいい。

 

ずっとそこにあってほしい。全部去らないでほしい。過ぎていかないでほしい。

何も手放したくないし、何かを別に得たくもない。

ずっと過去にいたい。ずっとこのまんまがいい。

 

しかし、それは間違っている。すべて不正解だ。

それをずっと解りながらも、私はあえて間違いを抱いているんだろう。

 

そう、誰よりも私は明日を生きないといけないし、強くならないといけない。

誰よりも信じないといけないし、振り返らずにひたすら前に進んでいかないといけない。

たぶんこの世の誰よりも私は、必死に明日に願っていなくちゃいけない。

このまんまじゃいけない。と、過去を捨てていかないといけない。

 

たぶん残されたカメラロールの写真など、すべて消去するべきで、

また次の春に咲く桜に「君は去年より綺麗だね。私だって去年より綺麗になれたでしょう。だっていっぱい変わることができたもの」と胸を張って眺めていなくちゃならない。

 

踏み潰された桜に涙を零している場合じゃない事を

誰よりも私が知っていた。

 

「もっと触れていたかった」モノに、また触れる事ができるように生きていくべきだ。

その為に、次に咲く桜には絶対に過去は映さない。と、決めよう。

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踏み潰され汚れてしまった、昨日の桜の花びらが教えてくれた。そう、期待だ。

また来る季節に誓いのキスをさせてくれた。

 

それから何度も今年の春にありがとうと、お礼した。

そして来年また会おう。と、手を振って、しばしのお別れをした。