隠すべき夢の話。
その人が私に求めるモノは、「安心」だろう。
「君はみんなと違う僕を見てくれている気がする。優しいね。」と、眠る前に私に弱音を吐いた。
その人を見てると、彼と出会った頃の事を思い出す。
弱々しくて、今にも壊れてしまいそうで、
誰かに認めてもらいたくて必死で、もがき苦しんでて、
死にたくても死ねないのは、きっと希望を沢山もっているからで、自分をまだ信じ続けているからで、
まだ沢山の力を秘めているから。
それを受け止めてくれる誰かにまだ出会えていないのだろう。
誰の前でも、丸裸になれないから苦しんだろう。
私はその人を見つめながら、
「何かあるなら聞くからね。たとえそれが汚くても、弱くても私は幻滅しないと思う。だから安心して生きてね。」と言って、おやすみ。と撫でた。
でも、その人は彼では無い。
だから、私がこのような言葉を吐く事はズルイ事なのかもしれない。でも仕方なかった。
罪悪感を感じながら、私はその人を撫でていて、
この人の全てを愛してくれる人に、この人が出会えますように。と祈った。
彼と出会った頃、彼は私に何も見せてくれなかった。
何を聞いても、嘘をついて、何かを沢山隠した。
たまに悲しい目をして遠くを見つめる彼の横顔を眺め、私は誓ったのだった。
「絶対いつか、この人の全てを抱きしめてやる。絶対この人になる。」と誓ったのだった。
しかし、さらけ出してもらう事は、決して簡単じゃ無かった。
でも、それは
当時の私に受け止められるほどの器が無かったからなのだと今なら解る。
たとえ、さらけ出されたとしても、眺めるだけで何もしてあげられなかっただろう。
だから彼は、少しづつ少しづつ近寄ってきてくれた。
少しづつ少しづつ見せ続けてくれた。
そうして、私と彼には今の「安心」がある。
だから、
その人が私に弱さをさらけ出し、悲しい目をした時、思った。
彼のおかげだ。と素直に思った。
その人は、当時の彼のように「君には器が無いから、見せれないよ」とは言わなかったし、
「いつもどこが皆とは違うところを見て、満たしてくれてありがとう。」と笑ってくれる。
誰にも見せたくなくて必死に隠してあるはずの部分。
その人の黒くて塊になった弱さを、抱きしめてあげられる、この能力は
彼との日々で身についた、この能力は
確かにしっかりと私に備わっていた。
たぶん私は変わらず、ずっと彼が好きだ。
違う人の弱さに寄り添い、撫でている間も
私はずっと彼が好きだろう。
だけど、彼のような人を見離す事もできない。
そう、これは私の弱さだ。
私が惚れて離せなくなった、その弱さは
私とも同じだから。私の弱さでもあるから。
だから生かしてあげたい。
私を生かすように、彼を、その人を生かし続けてあげたい。
だから、まだここは弱くてもいい。
と、そんな夢をみた。隠すべき夢の話を。