れしをそう。

嘘。そう全部、嘘。Twitter:@nisemonoko

味の無い飴玉

「私は何もないんで、何もできないです。何もできなくなったんです。色んな人の足を引っ張ります、いつも期待を裏切ります。いつもです。いつもなんです。あぁ田舎に隠れないといけないでしょうか。でもそんな田舎に逃げてしまうような、私が私は嫌いです。」

 

匿名希望さん

「私は今のままのさあ子さんが好きですよ」

 

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昔、沢山の人の前で話をする時、私は向けられた人の視線に

「この人たちは何を求めていて、私を見てるんだろう」を考えながら話をした。そして、話ができた。

 

「さあこさんは本番に強いね」

「さあこさんがいてくれてほんとに良かった」

「さあこさんにはほんとに助かっているよ」

 

しかし、私はこんな言葉達を何度も跡形も無くなるくらいにすり潰しては「私は求められると疲れる」と吐き捨て続けた。

そう、沢山の人の“想い”を無下に扱って生きてしまった。

何度も何度も“期待”を嫌って生きてきてしまった。

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「さあこは頭がいいのにどうしてこうなったの?」

「君はどうして人と同じことができないの」

「どうして、君はいつまでも幸せになろうとしないの?」

 

味の無い飴玉を口に頬り込んで、いつかを待った。

いつか皆が私を諦める日を待った。

ポケットにはいつくもの飴玉を忍ばしながら、皆の“期待”が消えるのを待った。

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その日は空は雨をこれでもかってくらいに吐いて

傘のない私を濡らし続けた。

「どうしてこんなに何も出来ないの、私は私をいつか好きになれるの」

ずぶ濡れになったジャケットのポケットに手を入れて

あの日忍ばせた飴玉に触れて思い出した。

その飴玉をひとつ口に入れて、全く味を感じられない事に、味が無いことにこれでもかってくらいに泣いた。

空が吐いた水に紛れて、辺りを濡らし続けた。

 

 

そうだ思い出した。

わたしが“期待”を避け続けたんだった。

私が人の“想い”を殺め続けたんだった。

私がこうなる事を願い続けたんだった。

私のせい、私のせいだった。

 

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「さあこさんはこれするの上手ですね」

「私はさあこさんを期待してますよ」

 

その日

「わたし、まだやり続けます。期待し続けていきます。もっと皆さまの役に立てるように努力します」

を書き加えた。

 

「今月の目標は、文字をもう1度書いていきます。それと本を2冊読みます」と、定めた。

 

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あの日、ポケットの味の無い飴玉は全部捨てた。

もうポケットには何も忍ばせない。

いつか誰かに飴玉を貰える日まで、そのスペースだけを空けて。