れしをそう。

嘘。そう全部、嘘。Twitter:@nisemonoko

私が愛した街にお別れを。

気が付いた時には、この街にいて、

気が付いた時には、この街のことが好きになっていて、

気が付いた時には、この街を愛してしまっていた。

 

13年間はあまりにも長かった

 

12年前「大阪なんて大嫌いだ」と、

当時落ち着きのなかった私は、突然家を飛び出した。

 

そこからしばらく経って、

大阪に戻ってきた時には、見知らぬ街が最寄り駅になっていた。

 

その時のことを今でも鮮明に覚えている。

 

東京から大阪に帰ってくる最中、

地図を見て、自分の帰るはずの駅を指でなぞりながら、

なんだか寂しい気持ちになったことを。

 

最寄り駅から『家』だと指定される場所に向かう道で、

「私の居場所なんかどこにもないんだ」と涙目になってたことを。

 

自分で選んだ訳でもない、

よく分からない街にしばらく慣れないまま過ごしていたんだっけな。

なかなか好きになれなかった。

 

そこから13年間、沢山のことがあった。

思い出したくもないほどに苦しい日々も、悲しみで壊れそうになった時も、

全部、この家で、全部、この街だった。

 

そして、私はもうすぐこの街を離れる。

 

13年前の私がどんな気持ちでこの家に帰ってきていたのかなんて覚えていないけれど、

夜の街で朝まで働いて、眠い目をこすりながら帰ってきたのも、

冷たいご飯を一人涙を流しながら食べたり、いつだって帰りたくなかったことも、

突然、母親が働けない身体になって、必死で自分を責めた時も、

ある日、前が見えなくなって、ご飯の味がしなくなって、世界から色が消えて、

生きる意味を必死で見つけようとしたのも、

もう一度人間らしく生きてみようと、

ここで仕事をしてみようと再起できたのも、

全部、この家だった。

今日まで誇りに思うことがなかった、この家だった。

 

たぶん私はこの街が大好きだった。

 

 

「また帰ってくるからね」

 

住み慣れた街を歩きながら、離れる決心をしようと思った。

夜に生きる私を包みこむように、静寂が雑念を洗い流してくれた。

 

この街の良いところは、夜が静かすぎることだ。

 

世界から誰もいなくなったみたいに、ぐっすりと眠りすぎてしまうところだ。

 

あの日涙を流しながら話した桜の木の前で、「ありがとう」と言った。

噓でも綺麗とは言えない白に近いピンク色に、うっすら緑色が混じってる。

もうすぐ春が終わる。

 

一番綺麗な時に別れを告げれなかったことを後悔しながら、

「また帰ってくるからね」と、昔のように写真を一枚撮った。

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どこで暮らしても、私は私だし、

どの街にも、きっと桜は咲く。

 

だけど、ここで生きてこれたことを私は誇りに思う。

 

明日太陽が昇らなくても、

ここで生きた私のことを、初めて最高に幸せだと思えた。

 

 

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たとえ生きる場所が違うとしても

 

ゆっくり時間をかけて私の中に落ちていく決意は、

すぐにエネルギーへと変わっていた。

 

私は、私として今日までと同じように苦い空気を吸いながら、

ゆっくりと生きていくはずだ。

 

“新しい”が何よりも好きだったはずの私が、

今“新しい”を受け止められないのは、大人になったからなんかじゃない。

 

誰よりも過去を愛しすぎているからだ。

それはいつだって同じだろう。

 

ひとつひとつ過去を捨てながら今日までやってこれた。

愛しているものをいくつも手放してきたはずで、

そうやってやってこれたはずだ。

 

できないわけがない。さよならができないはずがない。

明日に行けないはずがない。

 

たとえ生きていく場所が変わっても、私は私だ。

 

今日までの私をちゃんと活かしてあげられるに決まってる。

 

大好きだった。でいい。ずっと愛している。で、いい。

 

 

sarkorinko.hateblo.jp

次は愛しているから始めよう。

 

今の私は、きっとあの頃の私より幾分かは強い。

あの頃の私が驚くくらいには成長できているはずだ。よく分からないけれど自信がある。

 

だから次は、最初から好きになる努力をしようと思う。

好きから始めようと思う。

それが、今ならできる気がする。よくわからないけれど。

 

だから、言える。

 

さよなら。ありがとう。

 

いつか、また会おうね。ばいばい。